【不思議】宝物のガラクタ

付喪神・人形,守護霊・感動・しんみり

 

304 :本当にあった怖い名無し:2007/04/19(木) 12:23:59 ID:mArsrUAv0

家は昔質屋だったと言っても、じいちゃんが17歳の頃までだから、私は話でしか知らないのだけど、
結構面白い話を聞けた。

 

その日の喜一は店番をしていた。
喜一がレジ台に顎を乗せて、晴天の空を恨めしそうに見上げていたとき、
「もし、坊やここの主はどこかね?」
喜一はビクっと体を大きくはねらせた。
全く人の気配が無かったのに、急に太った男が店の前に現れたのだ。

 

 

304 :本当にあった怖い名無し:2007/04/19(木) 12:23:59 ID:mArsrUAv0

「えっと、親父は骨董市に出かけてて、夜まで戻らないよ」
喜一の言葉に、男は急に挙動不振になった、
「どうしよう…どうしようか?…いやしかし…」
男は何やらぶつくさ言い出した。
男はもう水無月になると言うのに、大きな虫食いだらけのコートを羽織り、帽子を深くかぶっていた。
男の成りを見て喜一は、
こいつは金に困ってガラクタを押し売りに来たタイプだな、
動きがせわしないのは、きっと取立にでも追われているのだろう、と喜一は考えた。

 

男の独り言は、まるで相談の様。
「どうする?しかし時間が無いぞ、この子に任せてはどうだろう?でもこんなガキに全てを任せるのは…」
喜一は男の態度にイライラし、
「おじさん、冷やかしなら帰ってくれよ。今は買い取り出来ないからさ」
喜一がきつく言うと、男はガラクタがあふれ出るパンパンのカバンを悲しげに見つめて、無言で出て行った。

 

その日の夕方、「おいキー坊」。店に駐在さんがやってきた。
「なななな何俺何にもしてないよ」
身に覚えは無いが、喜一は体を強張らせた。
「はは、お前に用はねぇよ。親父さんいるかい?」
今日の親父は人気物だ。
「夜まで戻らないけど、親父がどーしたの?」
喜一の声に、
「そうか、困ったな。たぶんお前さんちの落とし物だと思って持ってきたんだけどよ、確認の使用がねぇな」
髭をさすりながら駐在さんが荷車で運ばせた物は、昼にきた客の持ち物だった。
持ち物だけじゃない。服、靴、帽子全てだった。
「こんな骨董品扱ってるのなんて、お前さん家ぐらいだろう?
 でも、落とし物としては不自然でな。
 カバンの中だけじゃなく、服の中にまでパンパンに骨董品が詰まっててよ。帽子の中にまでだぜ?」
喜一はごくりとつばを飲んだ。
何かが起こった。もしくは、起こっていると感じたからだ。
駐在さんには見覚えがあると言い、荷物を店で預かり、一つ一つを広げてみた。

 

 

305 :本当にあった怖い名無し:2007/04/19(木) 12:24:39 ID:mArsrUAv0

乱雑にガラクタが詰まっていた鞄の中から、一つだけ立派な桐の箱が出て来た。
「へその緒か?」
喜一は箱の中が気になったが、恐ろしさもあったため箱は開けず、親父の帰りを待つ事にした。

 

夜になり親父が帰って来た。
喜一は店から居間に入り、玄関の親父の元へと走った。
「親父!ちょっと来て!」
喜一の声に、ほろ酔いだった親父の目つきが変わる。
店に入りガラクタの山を見るなり、
「そうか、そうだったか…喜一、俺宛の郵便持って来い」
喜一が何を言うわけでもなく、親父には何か解ったのか、喜一に命令した。

 

親父はここ3日、他県の骨董市(一種の寄合)に顔を出していたため、2日分の郵便物が貯まっていた。
親父は一つのハガキを見つけるとため息をつき、
「すまなかったなぁ…」と、ガラクタに向かってぽつりと言った。

 

親父は数ヶ月程前、旧友の家に招かれた。
古い納屋を近々取り壊すため、中の骨董品を鑑定して欲しいと言われたのだ。
高値で売れれば、骨董品を頭金に納屋を新調しようとしていたのだが、
どれも商品になる様な物は無く、旧友は納屋の新調を先延ばしにする事にした。
ガラクタばかりだったが、親父は何かを感じたのか、
納屋を取り壊すさい、「骨董品を引き取らせて欲しい」と言い、旧友も快く承諾した。

 

ハガキは、『言い忘れていたが、取り壊しを2日後行う』と言う内容の物。
あのガラクタ達は、納屋ごと捨てられるのを恐れ、親父の約束を信じ、ここまでやってきたのだ。
小さな小さな力を集め、ぎゅうぎゅうになってここまで来たが親父は留守。
そして道ばたで力つきたのだった。
「これは?」
親父が桐の箱に気付いた。
「こんな物、あいつの家で見なかったが…」
親父が桐の箱を開けた。
「こいつは…凄いな…」
中には綺麗な石が入っていた。何かの宝石の様だ。
自分達がお金にならない事を分っていたのか、喜一にはそれが引き取り金に見えた。
「はは…律儀なもんだな」
そう言うと親父は、一つ一つを磨きだした。

 

ガラクタの中には、何に使うのか分らないような古い道具まであった。
修理された跡があり、大切に使われていた事がわかる。
喜一は後悔した。昼間の事を。
ガラクタを丁寧に磨く親父の背中を見て喜一は、
物も人にも大切に接すれば、いつか自分にも、こんな素敵な奇跡が起るだろうか?
そんな事を思いながら、親父と一緒に遅くまでガラクタ達を磨いたのだった。

 

 

Right Caption

キキ

これみんなにも言えることだね
物も人も大切に接すれば、いつか素敵な事が起こる
世の中は汚い事が多いから、誠実で綺麗でいるのって大変だよね
でも、そうありたいと思える心が大事なんじゃないかな