【不思議】黒しっぽの猫
372 :本当にあった怖い名無し:2005/11/05(土) 15:33:48 ID:7RtPDqJd0
少し不思議な話。
俺が工房の頃、バイトで貯めた金で念願の原チャリを買った。
仲間内で原チャリを持ってなかったのは俺だけだったので、喜びもひとしおだった。
朝はギリギリまで寝て、遅刻確定の遅いチャリを抜き去って、
学校のそばの仲間の家の駐車場に滑り込む。そこの奴と一緒に登校。
学校帰りは、同級の奴らと原チャリでそのへんを流すのが日課になっていた。
暇があると、俺は原チャリにワックスがけしてピカピカにしてた。
そんな俺にも悩みがあった。それは、近所を徘徊する野良猫だ。
近所の馬鹿が餌やりしてるので、野良猫は近所に居座り、いつも俺の原チャリのシートで寝てやがる。
猫の肉球にはアブラがあり、俺のシートに猫の足跡がつく事が何度もあった。
猫の肉球のアブラ汚れは落ちにくく、特殊なクリーナーで掃除しないと落とせないほど強力だ。
俺はシートで寝ている猫を見かけるたびに、「あにやってんだ、ゴルァ!」と箒で追っ払っていた。
慌てて逃げるので、シート以外のボディも傷がつく。
しろい体に尻尾だけ黒いその野良猫に、俺は『黒しっぽ』と名づけ、鋭意警戒をしていた。
373 :本当にあった怖い名無し:2005/11/05(土) 15:36:17 ID:7RtPDqJd0
黒しっぽとの終わりの無い攻防が続いたある日、近居の消防らにエアガン乱射されてる黒しっぽに遭遇した。
ザマァねえぜ、黒しっぽ。
俺は通り過ぎようとしたが、消防三人の容赦ないジェットストリームアタックは超強力で、
瞬く間に黒しっぽは追い詰められた。
抵抗できない黒しっぽに浴びせられるBB弾。
俺は何故か「オラ!ガキ!あっち行けや!!」と消防らを追っ払った。
それは黒しっぽを庇ったというよりは、俺の獲物を横取りされた怒りがそうさせたのだった。
黒しっぽは恩人である俺に思い切りガン垂れて、サッと走り去った。
「あの野郎・・・!!」
それ以来、ぱったりと姿を見せなくなった黒しっぽ。おかげで俺の愛車はいつもピカピカ。
上機嫌な日々が続いたある秋の日、俺は仲間の家に入り浸って、夕暮れ時に帰宅の途についた。
フンフンと鼻歌交じりに原チャリを流す。
いつもの交差点を直進すれば家はすぐそこだ。
信号が青だったので、減速せずに交差点に進入しようとしたその時、
「グバン!」
何かにぶつかった。
俺が急ブレーキを掛けた瞬間、すぐ目の前スレスレを、信号無視のトラックが猛スピードで通り過ぎた。
「あぶねぇ・・・轢かれそこなったぜ・・・」
ホッとした俺は、何にぶつかったのか気になり周囲を見回した。
・・・そこには見覚えのある猫の死体が転がっていた。
374 :本当にあった怖い名無し:2005/11/05(土) 15:38:23 ID:7RtPDqJd0
・・・黒しっぽだった。
俺はもともと恩返しなんて信じる人間じゃなかったし、
まさか黒しっぽがトラックに轢かれそうになった俺を、身を挺して庇ったなどとは思えなかった。
そんなこと、あるわきゃネーよ。
そう思いながらも、俺は何故か黒しっぽの弛緩した死体を抱いて号泣していた。
原チャリの前面には、黒しっぽの毛が風にそよいでいた。
俺はそれをきっかけに、原チャリを仲間に売り払った。
仲間は「気にしすぎだって。違う猫じゃねーの?」と言っていたが、俺にはそうは思えない。
今でもバンプのKを聴くと、何故かあの黒しっぽの事を思い出す。
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